ムチは矢竹で作る

「恵雨語録」47ページに、

とあります。この記事の出展は不明ですが、芦田先生のお話です。全国行脚の中での話もありますので、大正15年から昭和20年頃までのことでしょう。

 恵雨語録には「鞭」とあって、「教鞭」とはありません。

なぜ、矢竹であったのか

 ヤダケは戦国時代に鉄砲が広がるまでは、弓矢の矢の材料として、全国で栽培されていたそうです。
 矢は、使い捨ての武器としてたくさん栽培されていました。それが、鉄砲の伝来と共に廃れていきます。弓道として残ることになります。
 それでも、ヤダケは生命力の強い、ササの仲間で、小高い丘陵地帯にたくさん自生していたそうです。
 それで、身近にあったヤダケをムチとして利用したのだと思います。

が、戦後、開発と共に消えていっているそうです。

ムチについての思い出

 1986年夏、黒沢尻東小学校の職員室。米澤徳一先生が椅子に腰掛け、下にうつむいて何かをしています。いずみ会指導部長をされており、「本日の授業について」や「教式の話」では、恐い先生というイメージがありましたので、
 「先生、何をされているんですか。」
とおそるおそる聞くと、
 「鞭を忘れてね、今、作っているんだよ。」
と仰られました(おだやかな声だったので一安心)。うつむいて、肥後守(ひごのかみ)を持って、ごみ箱の上で竹を削っておられました。
 「○○(私の名前)君、鞭はね、こうやって作るんだよ。」
 「矢竹が一番いいんだ。」
 「この矢竹はね、○○先生に(お名前を忘れました)、調達してもらったんだよ。」
と。
 その時、米澤先生は何本かムチを作られましたが、その内の2本を頂きました。

 いずみ会の先生方は、どなたも自分用の鞭を持たれています。
 太いの、長いの様々ですが、こうやって自作されているのでした。
 女の先生は、男の先生に作ってもらったそうです。

 その前後の教式の話の中で、

というお話がありました。

懲戒の鞭

 「麻績(おみ)村長ブログ」に「小竹の指し棒で『教鞭を執る』の意味を話す」という写真があり、教鞭の写真がのっています。これは、3尺物で、懲戒の鞭にもなるでしょう。

 明治時代、学校制度を始めるにあたって、優秀な人材を海外に留学させ、帰国後、後進の指導にあたらせました。帰国者は外国の教師の真似をして教えたことでしょう。イギリスではこの指示棒は懲戒のための鞭でもありました。
 それで、この指示棒に「鞭」という名前を付けたのではないかと思っています。

ムチの自作

 米澤先生に教えていただいた後、自分でも自作してみました。
 矢竹は、ホームセンターに売っていました。肥後守もそこで買いました。
 矢竹を百均で買ったこともあります(でもそれは、きっと矢竹ではなかったでしょう。)が2〜30本は作ったと思います。いろんな先生にあげました。ところがあちこちの教室で授業するようになると、そこへ置き忘れることも多かったです。緊張して授業をするので、授業が終わると緊張感がほぐれ、それで置き忘れてしまうのでしょう。担任の先生が返してくれることもありましたが、そのままになったことも多かったです。米澤先生にいただいたムチも大事にしていたのですが、どこかへ置き忘れてしまいました。

矢竹を入手できない

 その内に矢竹を入手できなくなりました。あちこちの店を探しましたが、見つかりません。
 百均で竹の菜箸を売っていました。孟宗竹を1センチぐらいの太さに、丸く削った物です。4本で100円です。それを短くしてムチを作ってみましたが、やっぱり音が少し違います。

最後の1本 (2014年6月23日)

 最後の1本を先日無くしてしまいました。緊急事態です。

ヤダケ

矢竹を探す

 ホームセンター2カ所へ行ってみましたが、見つかりません。店員に聞いても取り扱っていないとのことです。更にもう1軒ホームセンターに電話してみましたが、置いていないし取り扱ってもいないとのことです。
 それで、インターネットで検索して矢竹を売っていないか探しました。ところが、なかなか見つかりません。あっても、弓矢の矢で、2万円もします。釣り竿も高価です。
 矢竹の苗を入手できるか探して、問い合わせると、もう販売していないとのことです。材もないとのことです。

 矢竹はどこにでも生えている、雑草みたいな竹だという認識がありますので、やはりインターネットで自生している矢竹の情報はないか検索しましたが、近場にはあまりありません。

 それでも情報のヒントを見つけたところに行ってみました。神社がある山、河原、山です。

神社

 神社がある山は、山全体が神域で、3時間ぐらい、参道から外れた所等も回ってみましたが、矢竹はありませんでした。もしや回り忘れたところがあったかもと、2度行きました。

庭園の庭

 拝観料を取る庭園の庭にあるという話がインターネットに載っていましたが、さすがに行けません。売店で販売していればいんですが望み薄です。

河川敷

 河川敷の方は、サイクリングができるように舗装されているところを中心に、2〜3時間ぐらい歩き回りました。

小高い山

 山の方は、幹線道から農道に入り、更に、軽自動車がやっと通れる(他車と対向できない)細い道を600メートルぐらい行ったところです。向こうから車が来ないかとても心配しました。
 行くと畑があり、人はいません。畑の作物の支柱を見ると矢竹のようです。近くに矢竹らしい竹がたくさん生えています。下にも切った竹が落ちています。雑草として切り捨てられたのでしょう。その内の1本を拾って帰りました。少し離れたところに生えていた緑色の竹も切って持って帰りました。
 拾った方は、ずいぶん軽い音です。緑色の方は数日すると、しなびてしまいました。どうも竹の種類が違うようです。後日、最後行くと畑の手入れをしている人がおり、聞いてみると篠竹ということでした。

釣具店

 矢竹が釣具店に流れている、そちらにあるかもしれないという情報がありました。
 そこで、近くの国道沿いの大きな釣具店にも行ってみましたが、数年前まで置いていたが、今はない。チェーン店でも残っていればあるかも知れないが、とのことです。

釣り竿を作っている店

 ということで緊急事態は続きます。
 再度、インターネットで検索すると「竹甚工房」というお店で矢竹を売っているらしい。「つり竿のタケ、ササ専門店」ともあります。これは手にはいるかも知れないと電話することにしました。
 矢竹が欲しいこと、釣り竿を作るわけではないことを電話で説明しました。「教鞭」と言っても分かりませんよね。
 どんな物が欲しいのか写真で送って欲しいということでしたので、先日落ちていた竹で作ったムチの写真をスマホで撮り、説明用の図も作り、メールで送りました。

ムチ試作 ヤダケ全体図

 メールや電話で説明しましたが、やっぱりお店に行って・・・ということで高速を飛ばして行ってきました。
 突然お邪魔した上に、2時間近くもお話ししました。竹の話もいろいろお聞きしました。知らないことばかりです。

 で、作っていただいたムチを5本と、ヤダケ竹材を10本いただいて帰りました。
 竹甚工房には別のホームページもあるようです。


 次の4種類のムチが今、手元にあります。

 この4種類のムチを実際に黒板を突いてみました。

 そうすると、一番良い音がしたのは、

でした。
 火入れがしてあり、少し細目の矢竹です。釣り竿用に竹甚工房さんが全国の山々を探して見つけた矢竹で、節の間が短いため、腰の強い竹になっています。
 腰の強さはムチには必要ないのですが、竹質が強いためでしょうが、締まった音になります。

 2番目が

でした。
 これも火入れがしてあり、堅い感じがします。
 いい音がします。

 3番目が

です。
 火入れ処理がされていません。
 それでも、なかなかいい音です。

 4番目が

です。
 火入れしたのも入っています。
 火入れすると少し良くなります。
 太いのと細いのがありますが、細い方が良い音がします。
 中の1本は、2番目ぐらいの音がしました(一番上の棒です)。

持ち方

 竹甚工房さんで、ムチの持つ方の話がありました。工房さんは、釣り竿でも何でも、竹は根元側を持つとおっしゃるのです。
 私は、従来、竹の先側を持って、根元側を黒板に当てて突いていました。
 反対なのです。
 それで、今回、どちらがよい音がするか、比べてみました。
 そうすると、根元側を持って突いた方が良い音がします。
 長年、反対側を持って突いてきましたから、ずいぶん違和感があります。
 どうしようかと、悩んでいるところです。

持ち方(後日談)

 第132回国語教壇修養会で、会の先生方にどちらを持つか聞きました。特に気をつけている方は少なかったのですが、「根本を持って、先でつく」に合議しました。以後これでいきたいと思います。

その後 (2014年7月13日(日))

 今度は里山で探してみようと、日曜日の朝早くから、ドライブがてらに出かけました。
 矢竹らしいのを1カ所見つけましたが、近くにいた人に聞くと、土地の持ち主がややこしい人らしく、勝手の入らない方がいいだろうとのことでした。残念。
 もう1カ所、これは篠竹です。たくさん取れそうなので、秋に行くことにしました。

 更にドライブしていると、竹林公園の看板がありましたので、寄ってみることにしました。
 園内をだいぶ歩きましたが、矢竹の表示を見つけることができません。しかたなく施設の人に聞くと案内してくれました。なんと、始めにこれかな?と思っていた竹がそれでした。案内の表示もありました。

竹甚さんが、ヤダケの葉は光っているので、遠くからでも
すぐわかる、との話でしたので、光っている様子を撮ってみましたが、
ちょっとやりすぎですね。
案内板は、根本左下にありました。

 矢竹が欲しいのですと施設の人に言うと、以前刈ったのが捨ててあるので、そこから持って帰っていいということでした。
 喜び勇んで探しましたが、矢竹は見つかりませんでした。太い竹ばかりでした。残念。

次の修養会(第132回国語教壇修養会)

 夏に芦田恵之助先生の実践に学ぶ授業の会(国語教壇修養会)があります。その会場へ連絡をとって、矢竹を探してもらうことにしています。
 篠竹でないことを願っています。矢竹なら苗をもらって、学校に植えようと思っています。

第132回国語教壇修養会で

 上にも書きましたが、ムチを持つ方を決めました。根本を持って、先でつくにしました。
 「矢本」というだけあって、1時間ほどドライブしただけで、2カ所ヤダケを見つけました。家人に断って少しだけいただきました。会の午後の話でムチの話をしました。


ムチに関する調査

 教鞭について調べること。


ムチは竹甚工房

 ムチを1本500円(送料別)で販売していただけるそうです。(2014年7月17日)