「百人一首」を声に出して読んでみよう

 東書 4年下

 百人一首は、私があまり興味を持たないままできたところのものです。古今集も万葉集も新古今集も体系本を購入し、よく読んだものです。それが、百人一首だけは、「あぁ、ちょっとなぁ」ということでおいてきたものです。何が「あぁ、ちょっと」かと言いますと、内容よりも技巧に走っている感じがするからです。清涼な感じもいいものですが、自分としては万葉集の素朴なところや、古今集のおおらかに楽しんでいるところが好きです。これが今回教壇をいただいたのは、しっかり勉強しなさいという会長先生のご深慮の賜ということでいます。
 また「日本の言葉(古典に親しむ)の扱い、現場も困っていると思います。」とのメールをいただきました。古典に親しむのに、現場はなぜ困っているのだろうか、ということを考えました。

 この辺りではないかと考えました。それに対し、

という返事が書けそうです。

 壇を頂いてから3つの買い物をしました。

教材の特徴

 日本古来の歌(和歌)である短歌を、声に出して読んでみよう、ということです。
 文字で読んでもあまりよく分からない題意が、声に出して詠んでみると、意外と分かるものです。

百人一首の本文

 下に教科書に載っている短歌を順に載せます。「番号」は、百人一首の番号です。

 インターネット上には、たくさんの情報が掲載されています。短歌の内容や、背景、作者については、検索からかなりの情報が得られます。そこで、ここから検索できるようにしてみました。

番号 短 歌 google 作 者 決まり字 出 典 季節
69 あらしふく 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり 検索 能因法師 (Wiki) あらし 後拾遺・秋 366 もみじ
2 春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 検索 持統天皇 (Wiki) はるす 新古今・夏 175
香具山
春過ぎて 夏来るらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山 検索 万葉・巻1 28
4 田子の浦に うちいでてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ 検索 山部赤人 (Wiki) たご 新古今・冬 675 富士山
田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける 検索
天地の
万葉・巻3 318
5 奥山に もみぢ踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき 検索 猿丸太夫 (Wiki) おく もみじ
鹿
よみ人しらず 古今・秋上 215
7 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に いでし月かも 検索 阿倍仲麻呂 (Wiki) あまの 古今・羇旅 406
15 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は ふりつつ 検索 光孝天皇 (Wiki) きみがためは 古今・春上 21 若菜
33 久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ 検索 紀友則 (Wiki) ひさ 古今・春下 84
35 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける 検索 紀貫之 (Wiki) ひとは 古今・春上 42
79 秋風に たなびく雲の 絶え間より もれいづる月の 影のさやけさ 検索 左京大夫顕輔(あきすけ)
(Wiki)
あきか 新古今・秋上 413 風。雲
月光
81 ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる 検索 後徳大寺左大臣
(藤原
実定(さねさだ)
(Wiki)
千載・夏 161 ほととぎす

 この10首の短歌の情報を集めるだけで本が1冊出来そうな量です。
 ここから得られた情報を、授業に出すものではありません。あくまでも先生の教材研究のためのものです。小学校4年生の子どもに、短歌の意味や背景、作者情報を伝えることがこの授業の目的とすれば、一部の子どもは好きになるかもしれませんが、きっと、多くの子どもはいやになるでしょう。

奥山に もみぢ踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき

あらしふく 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける

百人一首の覚え方

取り扱いの中心


 第一次指導 全文の概観

一、よむ  今日と明日の2日間、短歌という歌のお勉強をします。短歌はね、ゆっくり読むといいんだよ。
○本をもらってから、読んでみた人?
・順番読み。12人(短歌の現代語訳をよむように指示する)。
12分 ・導入時、歌を「短歌」とさらっと言う。

・旧仮名遣いの読み方。
 「ぢ」「てふ」「づ」「む」「ほひ」
二、とく ○題目
・「読んでみよう」。「みよう」ということは。そうしてみると、良いことがあるのね。



・「百人一首」はね、「小倉百人一首」というんだけれど、「かるた」を持っている人はいますか?
 お正月に遊んだりするのね。
 遊んでいる絵があるでしょう。
・かるた大会をするには、覚えた方がいいの。覚えられるかな?
 覚えるコツがあるんだよ。

・「小倉百人一首」はね、昔の人が、歌を詠んだたくさんの人の中から、歌のうまい人を百人選んで、その人一人ずつから一番いい歌を1つずつ選んで、全部で百の歌を集めたものなの。選んだのは、何年くらい前で、誰が選んだの?


◎ひびき
・その歌で「かるた」を作って、今の人も遊んでいるの。
・このような歌を、今でも作っている人がいます。
 なぜ800年間も伝わったのかな?そして今でも作っている人がいるの、どうしてかな?(答えは求めない)そこをお勉強しましょう。

○手引き
・この歌はね、日本で生まれた歌だから和歌とも言うんだけれど、今はなんて言うの?
   ・短歌。
 短歌の説明をしてくれている所があります。そこをノートに書いてください。
 そして、最初の「嵐吹く」の短歌も書きましょう。
・二、とくでは、「短歌」という言葉のお勉強をしますと言うので、「短歌」という言葉は使わず、「歌」と言う。


・教科書の挿絵。
 絵札を読んでいる人、字札を探している人
 絵札、字札、上の句、下の句





・教科書脚注。
 800年前
 藤原定家





・あぁ、いいなぁと思う人がいたから。
 そして皆にもいいなぁと思って欲しい。




・短歌は、読み仮名が書いてあるのは、ひらがなで書いてもいい。
三、よむ ・黙読 15分
・板書事項










5・
 7・
 5
 7・
 7
四、かく  「百人一首」を声に出してよんでみよう

 短歌は、五・七・五・七・七の
三十一音で表される
短い詩です。千年以上前に
日本で生まれました。
昔の人は、季節や自然、
人生、人を思う心などを
短歌によみ、おたがいに
伝え合っていました。

嵐吹く
 三室の山の
 もみぢ葉は
 竜田の川の
 錦なりけり
五、よむ ・指黙読1回。指斉読2回。 15分
六、とく ○事実・区分
 短歌を短く説明してくれています。「。」が3つあります(板書 番号)。
 3番目は、2つに分けるとわかりやすい。
 で、短歌の特徴を4つ挙げてくれています。
・三十一音
・日本で
・短歌によみ
・伝え合って



◎山
 嵐吹く
・錦というのは
・季節はいつだろう? それが分かるものが出てくる。
・三室山も、竜田川も紅葉で有名な場所なんだよ。
・紅葉が一番綺麗な季節はいつ?
・その季節の嵐というと、何?
・そんな嵐が吹くと、三室山の紅葉が、竜田川の綺麗な織物になるという歌。おもしろいね。

○余韻
 明日は春の歌を三首と夏の歌を二首、お勉強してみましょう。春の字が入っているから春とは限らないよ。夏は、1つめには夏の字が入っているからすぐ見つかるけど、2つめには入っていないから見つけるのが難しいかな。

・5+7+5+7+7=31?

・短歌に読み込んだのは
 ・季節
 ・自然、
 ・人生、
 ・人を思う心
など。




・五・七・五・七・七になっている?



野分(のわき)

七、よむ ・指斉読1回。 ・お家で、もう一度項に出して読んでみると、よくわかるよ。

 第二次指導 第1時 春と夏の短歌

一、よむ ○昨日、お家で読んでみた人。
 春と夏の歌は見つかりましたか?
・順番読み。12人。(短歌の現代語訳は読まない)
 短歌の所はね、ゆっくりよんでください。
12分
二、とく ○おさらい
・短歌(板書【短】)は、日本で(板書【日】)生まれた詩なのね。何文字で出来ているの?
 (板書【三】)
・その三十一文字の中に、自分の気持ちを伝えたのね。(板書【伝】)

・100首の短歌はね、だいたい古い順に載っているの。2つめの短歌ね、「春過ぎて、夏来にけらし」の短歌はね、百人一首で2番目の短歌なの。何年くらい前の人が作った歌だと思う?
 今から1300年くらい前の人。小倉百人一首を選んだ藤原定家より、さらに500年くらい前の人だよ。今から1300年くらい前の人がよんだ短歌が500年間忘れられず、さらに800年間、みんなから楽しまれている。それが短歌なんだよ。

◎承接
・その短歌をみんなも面白いなぁと思えるといいね。

○手引き
・今日は、春と夏の短歌をお勉強するんだったね。
 「春」の字が入っている短歌は、4つあるけど、2つは春じゃないんだ。1つは、「春」は終わったよ、過ぎちゃったよ、というから・・・夏の短歌なの。
 一つは、地名なんだ。奈良のね。大仏さんの近くの山だよ。春の字が入っているけど、その短歌は春の短歌じゃないの。
 で、春の短歌は「君がため」と「久方の」と、もう1つと言えば、梅の花が咲くのは春だね。・・・
・夏の1つは、もう分かったね。「春過ぎて」。もう1つは、鳥なんだ。この鳥が鳴き出すと夏になる。

・春の短歌と夏の短歌をノートに書いてください。
・板書事項
 三
 日
 短
 伝


















・春日大社といっても
通用しないだろう。
三、よむ ・黙読 10分
四、かく 君がため 春の野に出でて 
 若菜つむ わが衣手に
 雪は ふりつつ

久方の
 光のどけき 春の日に
 しづ心なく 花の散るらむ

人はいさ 心も知らず 
 ふるさとは 花ぞ昔の
 香に にほひける

春すぎて 夏来にけらし
 白妙の 衣ほすてふ
 天の香具山

ほととぎす
 鳴きつる方を ながむれば
 ただ有明の 月ぞ残れる
5・
 5・7
 7


 7・5
 7・7

5・7
 5・7
 7

5・7
 5・7
 7


 7・5
 7・7
五、よむ ・指黙読1回。

 短歌はね、ゆっくりよむといいんだけど、みんなで読む時は、少し早めでいきますよ。
 指斉読2回。
20分
六、とく ○語義・区分
・春の短歌は、
・夏の短歌は、

◎心

・春なのに、まだ雪が降っているのは?
 春の初めの頃の短歌ね。
・春が終わりそうで、花がどんどん散っているのは?
 春が一番盛りの頃の短歌ね。
・花も綺麗だし、いい香りがしているというのは?
 これ梅の花ね。
 この短歌はね、貫之が長谷寺に行く時は必ず泊まっていた宿に、久しぶりに泊まりに行った時、宿には入れてくれずに、家の中から「このようにちゃんと宿はあります」と声がかかって来たんです。カチンとくるでしょう?、でもね、貫之は近くに咲いていた梅の枝を折って、この短歌を添えて−一緒に付けて−宿の主人に渡したんです。「さぁ、人のこころは知りませんが、梅の花は同じように咲いています。」、私の心も昔と同じですよ、ということを伝えたかったんでしょうね。
 体のどこで春を見つけたの?

・「君がため」の短歌も、あるものを人にあげるのに、一緒の添えて渡した短歌だよ。何に添えたか分かる?
 若菜ね。春の七草って、知っている? 食べると長生きするといわれていたんだよ。それにこの短歌を付けて渡したの。もらった人は嬉しかったでしょうね。
 体のどこで春を見つけたの?

・「光」というのは、お日様の光なんだけれど、春の光は、どんな光なの? のどか
 それなのに、花は−桜の花なんだけれど−、どんどん、どんどん、散っているのね。静かに静かに散って欲しいなぁ、という短歌。
 体のどこで春を見つけたの?


・次は、夏の短歌。
・「春過ぎて」
 洗濯したての真っ白な服を、どこに干しているの?
 山にね。山だから、何がいっぱいあるの? 木。
 緑が青々とした山に、真っ白な服が干してあるのね。その色を見て、ああ、夏だなぁ。と思ったわけ。
 体のどこで夏を見つけたの?

・で、夏になると南の国から日本に渡ってくる鳥がいるの。その鳴き声はね、「テッペン、カケタカ」とか「東京特許許可局」とかいうように聞こえるそうです。
・「有り明けの月」というのはね、もう夜が明けているのにお月様がまだ見えていることをいうの。ということは、この人は夜明けまで何をしていたの?
 ホトトギスの声を聞くために、夜の間、ずっと起きていて、あ、鳴いた、と思ってその方を見たら、有り明けの月があったという短歌ね。
・ホトトギスを見ることはできたの?
 体のどこで夏を見つけたの?

・どう?短歌のこと面白くなってきた?

○余韻
 次の時間は、残りの秋と冬、そして旅の歌を勉強したいんだけれど、時間がないので、また学校の先生とお勉強してください。
 それと、できればかるたを作って、かるた取り大会も開いてください。
・語義は・・・・。
 でも、まぁ、きくかな?



・春から取り扱う。






・古今集 42 詞書き(ことばがき)
「かくさだかになんやどりはある」












・渚の院にて桜を見てよめる
    在原業平朝臣
53 世の中に たえてさくらの
 なかりせば 春の心は
 のどけからまし













・有り明けの月は、少しつらい月なんだよ、と言いたいところだが。
 後朝(きぬぎぬ)のせつなさの象徴。
七、よむ ・指斉読1回。 ・時間があれば暗誦に取り組みたい。

 第二次指導 第2時 秋・冬・旅の短歌

一、よむ ○昨日、お家で読んでみた人。
 秋と冬の歌は見つかりましたか?
・順番読み。12人。(短歌の現代語訳は読まない)
 短歌の所はね、ゆっくりよんでください。
10分
二、とく ○おさらい

◎承接

○手引き
三、よむ ・黙読 12分
四、かく 奥山に もみぢ踏み分け
 鳴く鹿の 声聞くときぞ
 秋は悲しき

秋風に
 たなびく雲の 絶え間より
 もれいづる月の
 影のさやけさ

田子の浦に
 うちいでてみれば 白妙の
 富士の高嶺に 雪は降りつつ

天の原 ふりさけ見れば
 春日なる 三笠の山に
 いでし月かも
5・7
 5・7
 7

5・
 7・5
 8
 7

6・
 8・5
 7・6

5・7
 5・7
 7
五、よむ ・指黙読1回。
 短歌はね、ゆっくりよむといいんだけど、みんなで読む時は、少し早めでいきますよ。
 指斉読2回。
20分
六、とく ○語義・区分
・秋の短歌は、
・冬の短歌は、
・旅の短歌

◎心
・旅行に行って詠んだ短歌なんだけれど、どこで詠んだと思う?
 中国。それも35年もそこにいて、帰りたくなっても帰れなかったの。それが、やっと帰れるようになって詠んだ短歌だと伝わっています。

・もう1つ冬の短歌も、どこで詠んだ短歌かな?
 田子の浦ね。

・秋の短歌2首。
 秋の風、台風じゃないよ。涼しい風に雲が横に広がっているの。その雲の間から、月の光が差すと、とても綺麗なのね。
 体のどこで秋を感じたの?

・奥山に
 紅葉が降り積もっている、山の中で鹿が鳴いている。
 鹿は何て言って鳴いているのでしょうね。

 体のどこで秋を感じたの?

○余韻
・語義は・・・・。
 でも、まぁ、きくかな?











・秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり
 まいてなどの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。
七、よむ ・指斉読1回。 ・時間があれば暗誦に
取り組みたい。



 教材研究からは離れますが、それぞれの短歌の舞台となったところの写真を撮ってみました。こちらのページです。