はじめに
先師芦田恵之助先生の教育道の根幹をなすものとして、「岡田虎二郎先生の静坐」を挙げることに異論のある方はないと思います。「芦田恵之助先生選集」(昭和四十二年岩波書店)に収録の先師の名著「静坐と教育」をお読み頂きたいと存じます。
鈴木佑治先生に今春、宮崎の杉田正臣先生から昭和三二年版「岡田虎二郎先生語録」を贈られました。奇しくも鈴木先生宿願の先師遺著復刻が実現した時でありました。この語録の味読によって先師の道を行ずる者に大躍進を期待するとの鈴木先生のお考えで、この語録写版を同友各位に配布することになりました。内容御一読でお判りのように、教育関係者のみならず、広く一般人の人生指針として価値あるものです。何かの機縁で広く各階層の方々にお読み頂ければ、ただに私の喜びにとどまりません。
昭和四十二年夏 いずみ会長 宇都宮 新
静 坐 無 為 国
敢えて求むる勿れ。無為の国に静坐せよ。坐するに、方三尺の処あらば、天地の春はこの内に漲り、人生の力と、人生の悦楽とはこの中に生ずる。静坐は真に大安楽の門である。